柏崎の最南端、十日町市と上越市に隣接する高柳町石黒地域。海側の市街地から約30分、黒姫山の麓に7集落、約50人が暮らしています。この地域に伝わる食と文化の継承活動に取り組んでいるNPO法人石黒邑(むら)理事長の田辺和幸さんと奥さまの須磨子さん夫妻に、石黒地域の「のっぺ」についてお聞きしました。
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「昔は祝言などのふるまいごとを自宅でしたから、そのときに最後に『のっぺ』を出していたそうです」と和幸さん。現在では家でふるまいをしなくなったため、正月や、里芋を収穫する秋ころから冬にかけて、家にある材料で作ることが多いそうです。「そのへんが大きく変わったところですよね」と須磨子さん。
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NPO法人では2015(平成27)年に昔の祝言を再現。「祝言の食事も集落によって違いがあったので、今回『のっぺ』についても複数の集落の方にお聞きしてみました」と須磨子さん。結果、「今は集落による違いではなく、家庭による違いですね」。今回の調査でわかったことは以下の通りです。
・片栗粉でくずをかく(とろみをつける)ことが大きな共通点。昔は、家に片栗粉がなかったときにはジャガイモをすりおろして上澄みを捨てて、それでとろみをつけていたそう。醤油と、砂糖やみりんを入れて甘めに味付けをする。
・山間地なので、昔は煮干しや家で干した椎茸をだしに使う家が多かった。今はだしパックや白だしを使うこともある。貝柱はほとんど使わない。
・材料は里芋、ニンジン、こんにゃく、銀杏、タケノコのほか、練り物は何かしら入る。お祝いのときには紅白かまぼこだったり、ちくわやさつまあげなど。昔は豆腐を入れていた家もあった。現在はけんちん汁には豆腐を入れるが、「のっぺ」に入れる家はあまりない。最後にゆり根を入れる家もある。昔はニワトリを飼っていた家も多かったので、鶏肉を入れる家庭もある。鮭は入れない。
・昔、祝言でふるまわれていたときは、とにかく多くの材料を入れて豪華にしていた。家で食べるときには基本的には家にある材料を使う。たくさん作るので、煮返して食べる。冷やして食べることはしない。
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【材料】里芋、ニンジン、ゴボウ、レンコン、インゲン、タケノコ、銀杏、さつま揚げ、油揚げ、こんにゃく、かまぼこ、ちくわ、鶏肉、きのこ類 【切り方】さいの目切り(1㎝程度)
【だし】煮干し、昆布、干し椎茸(椎茸は具として使う)
【味付け】醤油、砂糖、みりん、酒
【仕上げ方】片栗粉でとろみをつける
石黒出身の方が運営しているホームページ「石黒の昔の暮らし」の1955(昭和30)年ころまでのおかず紹介では、「のっぺ」を以下のように説明しています。
豆腐、こんにゃく、ニンジン、里芋、サツマイモ、ゴボウ、タケノコ、茸(きのこ)などをだし汁で煮込む。砂糖と醤油で味付けをして、くず粉でまとめる。冠婚祭(たくさんのおかずの最後に出される)でふるまわれる料理。
「『のっぺ』がどういうときに食べられていた料理なのか、という歴史がしっかりと次の世代に受け継がれてほしいですね」と和幸さんは思いを語りました。
取材・文:高橋真理子 撮影:高橋朋子 2024年12月